「…めんどくさいよ片岡くん」
「ケートちゃんさぁ、ツンデレなのバレバレなんだけど」
「っ、うるさい!」
めんどうなことばかり増やすきみがきらい。
好きでもないくせに距離を詰めてくるきみがきらい。
ドキドキさせるきみがきらい。
「───おやすみ、佳都ちゃん」
だけど、きみに抱きしめられる感覚は、どうしてか嫌いになれないんだ。
「…うん」
「起きたら連絡先教えろよ」
「…ねぇ、片岡くんホントに熱ある?仮病だったら刺すよ」
「すぐ刺すな」
「だって、」
「確かめてみろよ。おでこ、まだ熱いから」
「いいです。間に合ってます」
私と彼の間に名前のない感情が芽生えたのは、抱きしめ合って眠るとある日の夜のこと。
一緒に寝たのも、拒否しなかったのも───ちゃんと、私の意志だった。