甘い声で誘導されるように、私は身体の向きを反転させる。
――バチ、片岡くんと目が合った。
ふ、と彼が小さく笑う。なんだか負けたみたいで悔しくてきゅっと下唇を噛み、視線を逸らした。
「ケートちゃん」と、落ち着いた声が降ってくる。
「照れてんの?顔赤いんじゃない?」
「、見えるわけないじゃん、暗いのに」
「…ケートちゃん、やっぱ結構かわいいとこあるよね」
「っ、か、」
「うつしたらごめんね」
突然、ぎゅっと抱きしめられた。
熱を持った身体が密着する。
片岡くんの匂いが鼻腔をくすぐった。
分かったように言わないで。
「照れてんの?」なんて、分かりきったこともわざわざ言葉にしないで。
勝手に私を抱き枕にしないでよ。



