「…、佳都ちゃん、アリガト」

「…別に、」



課題が終わってないだとか、もし今ここにチカさんがたまたま入ってきたらどう言い訳をしようとか。

そんなことを考えている余裕はなかった。



片岡くんに背を向ける形で同じ布団の中に居る。
意識したら最後、思考回路をぜんぶ持っていかれてしまいそうだった。



可愛げのない返事は、私の“普通”を保つための武器。

“ドキドキしない”は自分への呪文。


早く寝よう。
もう何も考えないようにしよう。



「…なぁ」




意識を奪われないように必死に自分に言い聞かせていると、片岡くんが開口した。


呼吸が落ち着いていることが分かり、すこし安心する。