「じゃあ、私部屋に戻るね」



ふと、時計を見るといつのまにが23時を過ぎていた。

…私も課題をやらなくちゃ。

片岡くんにそう言って、今度こそ部屋に戻ろうとすると。



「ケートちゃん、」



さっきと全く同じ。
覇気のない声が私を呼び止めたのだった。




…その声で呼ばれるの、苦手だ。

「まって」「いかないで」そんな気持ちが込められたような弱弱しい声。



寂しがり屋はどっち?
風邪ひいたらそうなる習性?

どっちみち、けっこうタチが悪いと思う。



足を止め、振り返る。





「…ケートちゃん、一緒にここで寝てよ、」




───まだ知らなかった片岡くんのずるさに、捕まってしまった。