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「あ、涼風さん」
帰り道。
片岡くんと日野くんの他愛もない会話を一歩後ろから聞いて歩いていた私をを、振り返った日野くんが呼んだ。
「忘れてた。連絡先、おしえて」
「え?」
「これから仕事たくさんお願いするようになると思うし。連絡先知らないのは普通に不便だから」
ごもっともだ。断る理由はもちろんない。
頷いて、スマホを取り出し日野くんのQRコードを読み取る。数少ない友達に《ヒノ ヒビキ》が加わった。
全部カタカナ表記にしてるんだ…と、そんなことを考えていると。
「俺、自分の名前のカタカナの字列気に入ってる」
「え?…あぁ、確かにバランス良いよね」
「やっぱ?涼風さんは、漢字の並びのほう綺麗かも」
「私もそう思う」