で、連れてきてもらった訳ですが
何も話せない。
話すことがない。
今まで何も接点のなかった相手と何を話せと言うんだ。
「ねぇ、今回は本当にありがとう。
ちょっとさっきのは、キツかったから助かった。」
「いや大丈夫だよ。それに女の子が困ってたら助けないとね。」
紳士的な人だな。
この発言で私の思った印象は翌日直ぐに消えることになるけど、今は、そう思った。
「そういえば、何で私のこと知ってたの?」
「あぁ、その事か。一ノ瀬さん、自分が学校でなんて呼ばれてるか知らないの?」
「名前以外に呼ばれ方なんて何があるって言うのよ。」
少しムキになってしまった。
私の、
麗羅
という名前は、
両親が残した唯一の形見のようなものだから。

