テテュスの箱舟

「レッドさん、私が船に乗ってきたこと、怒ってます?」

「怒っては無いけど、ちょっと驚いただけだ」

最初こそ彼女の行動に驚きはしたが、今では誰もが彼女を歓迎している
元々来る者拒まずのテテュス号は伯爵令嬢であっても例外ではない

仲間を大切に思う心があれば誰であっても迎え入れるのがこの船の信条なのだ

「本当ですか。私、皆さんを面倒に巻き込むかもしれませんよ」

怖々と顔を上げてこちらを窺うヴァレンティーナ
その目に映るのは戸惑いか葛藤かそれとも後悔か

「仲間の行く道に困難があれば共に闘うのが俺達の役目だ」

彼女が何を怖がっているのか分からないが、安心させるように言い聞かせ、無意識的に彼女の頭を撫でていた

「レッドさん、私子供じゃないですよ」

ヴァレンティーナは笑いながら、少し震える声で応えるのであった