裏切り姫と恋の病







「……」


男はただ黙って、ジッとこちらを見ていた。


さっきまで、あんなに喋ってたくせに。


急に黙るから、なんだかいたたまれない気持ちになり、逃げようと足を一歩動かした。


その時。



「おーい、(ゆい)。そろそろ行くぞ~」


真っ正面から、バイクのライトがこちらを照らし。

細めた目から見える、誰かがこちらに手を振る姿。



この男の友達だと、すぐに理解する。




私には関係ないや、と。止めた足をすぐに動かせると。


ーージャリッと、細かい砂利(じゃり)を踏んだと同時に。



「お前も一緒に来るか?」


男の、静かでハッキリとした声が背中を熱くさせる。



「えっ?」


言いながら、後ろを振り向くと。


揺れ動くタバコの煙の奥で、男は私を嘘偽りなく見つめている。