裏切り姫と恋の病








男の拳が、私目掛けて振り下ろされたとき。


ギュッとおもいっきり、目を瞑る。


その瞬間、ーーバキッ!!と鈍い音が響いた。



痛みが頬から全体へ、ビリビリと伝わってくるはずだったのに。


……あれ?


いつまで経っても、痛みがやってこない。



じゃあ、今聞こえてきた鈍い音の正体は……なに?



恐る恐る目を開けると。


足下には私を(さら)おうとした男が倒れていて、被っていたフードが脱げたまま気絶している。


思わず「なにっ……なんで!?」と声を出すと。




「一発KOなんて、さすが俺。
 この(こぶし)は本物だ。
 よくぞやってくれた、右拳くん」




目の前から、(かす)れた声が聞こえてくる。


見ると、一人の男が私の前に立っていて。

フード男を殴ったであろう自分の手を撫でていた。