裏切り姫と恋の病






男は私の横を通りすぎて、バイクの光に溶け込んでいこうとする。



その姿があまりにも寂しくて……。


……寂しい?


なんで?


初対面のはずなのに。


見知らぬ男についていくなんて、危険なことだって分かっているはずなのに。



心が。



「待って」


言うことを聞かないの。



「私も一緒に連れていってよ」



ゆっくりと振り向く男の顔は、逆光して見えない。


静まり返った公園は、微風(びふう)が辺りにある草木を揺らし、私の緊張感を煽り始める。




「……俺の名前は、千風(ちかぜ)(ゆい)
 お前は?」


「えっ……あっ。観月(みつき)希乃香(ののか)


「希乃香か、いい名前だ。」


「……っ」




ーードクンと鈍い音が体の奥から聞こえてくる。



彼の声

彼の雰囲気

彼の……見た目とは裏腹な優しさに。


心が奪われた瞬間だった。