マンションへと向かう車の中で、あたしは檜の事を想った。

 誕生日プレゼントに七号の指輪をくれた時、彼は号数を探るため店員さんの指を触ったと言っていた。

 ーーあれは嘘だったんだ。

 別に嘘をつかれたからといって、責める気持ちはない。

 ただ、あの上河さんの存在をあたしに知られないよう、嘘をついたのだと理解した。

 檜があの子に好意を寄せてというのは考えられない。だとすれば、既に告白を受けているのかもしれない。

 あたしに誤解されるのを恐れて、檜は嘘をついたと考えられた。

 何にせよ、上河さんから、付き合いを続けていても結婚なんて出来ないよ、と。遠回しに釘を刺された気がして、自宅へ戻ってからも憂鬱を引きずった。

 更にはその後、実家の母から電話を受け、元カレの圭介と別れた事を責められた。

 苛々した気持ちで応じたため、ついポロっと既に彼氏がいる事を漏らしてしまう。

 母は言わずもがな、食い付いた。

 彼氏の人柄や職業を聞き出し、結婚相手に相応しいかどうかを見定めようとしていた。

 当然、生徒と付き合っている事など言えず、あたしは話を濁した。