ボーダーライン。Neo【中】

◇ ♂

「檜っ!」

 収録現場を後にした所で、背後から呼び止められた。

 同じスタジオから出て駆け寄って来るのは、僕が兄貴分として信頼する透さんだ。

「透さん、お疲れ様です」

 彼が追い付き、再びテレビ局内の廊下を歩き始める。

「さっきの収録。透さんいきなり俺に話ふるから、かなり焦りましたよ?」

「ハハハっ。バラエティーにアドリブは付き物だろ? 臨機応変にやらないと」

「いやいやいや。ちゃんと台本通りやりましょうって」

 言いながら僕は頭を掻いた。

 新年を迎えて、はや三日が過ぎていた。

 今し方終えたバラエティー番組の撮影にはFAVORITEのグループの中から、僕だけが呼ばれ出演していた。

「……あ」

 透さんの呟きにつられて目を向ける。

 前方の別のスタジオから出て来たのは、売れっ子女優の笹峰(ささみね)優羽(ゆう)さんだ。

「あ、」

 彼女は透さんと同じく、こちらに気付くと、ポツリ、呟きを漏らした。

 そのまま付き添いのマネージャーに何か言い、僕たちへ歩み寄る。

「明けましておめでとうございます」

 言いながら笹峰さんが頭を下げると、僕たちも倣って挨拶し、お辞儀を返した。