「……あ。いや。サチ、もしかしてその事で悩んでないかなって、気になって。ごめんね、あたしデリカシー無かった」
申し訳なさそうに眉を下げる彼女を見て、慌てて頭を振る。
「ううん、そんな事気にしないで? それに、それなりには、ちゃんとシてるんだよ? ただ慎ちゃんが忙しくて、頻繁じゃないから……なかなか子供も出来ないだけで」
「そっか……」
美波は、一度出した煙草をやっぱり、と言いたげに鞄へ引っ込めた。
「……てかさ。檜くん、今大変そうだよね?」
「え?」
あたしはカップを手にしたまま、真顔になった。
何でまた彼の話題なんだろう、と疑問を抱くものの、そう言えばあの週刊誌は、美波と同じ会社のものだったな、と急に思い出し、目を細めた。
「ああ。女優さんとの熱愛、だっけ?」
雑誌は違えど、出版社で働く美波にとっては、仕事に関する話題なのだ。
檜と付き合っていたのは確かに過去だが、去年の情事を思うと途端に居心地が悪くなる。
話の内容次第では、途中で帰ろうかな、とも考えていた。
「うん。けどね? あれってデマだよ?」
「えっ!」
あたしは思わず頓狂な声を上げた。



