ボーダーライン。Neo【中】

やがて淫靡な水音が聞こえ、あたしは身をよじらせた。

 ーー早く欲しいよ。檜……

 うっすら目を開けると、あ、と呟く彼と目が合った。

 あからさまに翳りの差した瞳で、あたしは彼を見ていたと思う。

「ごめん、起こしちゃったよな?」

 いたずらがバレた様なあどけない表情で、慎ちゃんが笑みを浮かべる。

「何か。サチが凄い色っぽかったから、つい……」

 彼は手を引き抜き、行為を中断した。多分、あたしが怒っていると思ったのだろう。

「……ううん、いいよ」

 あたしは慎ちゃんの背に両手を回した。

「続き、しよ……?」

 上目遣いに彼を見やる。

「……うん」

 慎ちゃんが熱っぽくあたしを見つめ、唇を塞いだ。

 ーーお願いだから。早くあたしの体からあの人の痕跡を消して。檜からの刺激を……

 頭の何処かで冷静なあたしが、あたしを嘘吐き、と蔑んでいた。


 ***