携帯で一番近い映画館を検索すると、一件だけがヒットし、それほど遠くもないので地図を頼りに徒歩で向かう。
着いた先は繁華街から少し離れた路地裏に立つ映画館で、外観には少し趣が有った。
僕は腕時計で時刻を確認し、二十二時からのレイトショーを観る事にした。
ショッピングモール内に入ったそれとは違い、日中でも殆どひとけが無いのではないだろうか。
そう思わせるほど館内はガラガラで。 観客席には僕の他に、女性がひとり、少し離れた前列に座っているだけだった。
映画は一昔前に放映されていたリメイクらしく、純愛を貫く恋愛物だった。
フィルムが回って間もなく、僕はあれ、と首を傾げる。
ーーこれ……
スクリーンに映し出された映像に、既視感を覚えた。
物語が進むにつれ、もしかしたら、という仮定が、やはりそうだ、という確信に変わる。
僕は映画を観ながら、若干、涙の滲む気配がした。
単なる偶然にほかならないが、過去、幸子と付き合った翌日に初めてふたりで観た恋愛映画だった。
あの頃の僕は交際の事実に浮かれ、映画そっちのけで、幸子の表情を観察して楽しんでいたのだが。
真剣に観てみると、遠距離恋愛をする男女の、切ない恋物語だった。



