ガラリと寝室の襖を開けた時。

「あ。お帰り?」

 穏やかに笑う彼と目が合った。

 ーーこんな所でいったい何を……

 彼を(いぶか)り顔をしかめるが。慎ちゃんが畳の上に広げた年賀状に胸を撫で下ろした。

 一瞬、あたしの私物を見られたんじゃないかと焦りが生じた。

「年賀状の整理、忘れてて」

 言いながら彼は頭を掻く。

「……暖房もつけないで。寒くないの?」

 あたしは壁に掛かるリモコンを手に、ピッ、とエアコンをつけた。

「節電、だよ。俺は寒がりじゃないから」

 彼は前々から買っていたファイルに、年賀状を入れていく。

「晩御飯。すぐ用意するね?」

 そう言ってキッチンに向かおうとすると、あ、と背後から呼び止められた。

「今日は外食しないか? 久しぶりだし」

「え?」

 一体どういう風の吹きまわしだろう。

 あたしは目を瞬いた。

 慎ちゃんは、普段から外食よりもあたしの作る料理を好んで食べる。

 あたしとしては、たまには何もせずに外食したい気持ちもあるのだが、彼が喜んでくれるならと彼に合わせて料理をしていた。