もやもやとした霧が晴れるような開放感を感じていた。

「まぁ、さっき言ってた優羽ちゃんの事は気にするな? お互いに本気で好きになれたら良いんじゃないかなって、ちょっと思っただけだし。
 もちろん今のまま、連絡もしなくて良いと思う」

「……はい」

「もし直接会って優羽ちゃんにその事で突っ込まれたら、メモを無くしたとかって適当に誤魔化しとけ、……な?」

 言いながら悪戯っ子の目で笑う彼に、僕も釣られて笑う。

 ーー熱くし、明るくし、くつろがせる。

 酒に関しては感じた事が無いが、幸子を想う事に関しては、確かにと頷けた。

 僕は小さな決心を胸に、グラスの梅酒に口を付けた。






 少し離れた側道に車を停め、僕は車中から彼女の様子を窺っていた。

 こぢんまりとした弁当屋に、幸子はいた。

 今日は日曜日だから休みの可能性もあると思いつつ、奈々から聞いた住所を頼りに、車を走らせた。

 あの夜以来、想い焦がれた姿が、今視界の先にある。

 髪をサイドにまとめ、エプロンを着けた幸子に、胸の奥がグッと熱くなった。

 過去、付き合っていた時は、あの姿でよく料理を振る舞ってくれたものだ。