「結構キツい恋愛してんだなって」

「……え」

「一途過ぎて、意外だった」

「意外?」

「ああ。檜はさ、うじゃうじゃと女の子が寄ってきそうなその見てくれで。恋愛には特別苦労して無いだろうなって思ってた」

「偏見ですよ、それ」

 そう言って苦笑いを漏らす。

「けど。檜が無くした生きる糧は()()だったんだな?」

 透さんとまともに目が合い、僅かに狼狽えた。

「初めて味わった挫折、だったっけ?」

 彼に留めた視線を下げ、俯きがちに、はい、と頷いた。

 そう言えば以前、透さんにはそんな話をしていたのだ。

「挫折の話で言えば、俺の経験も似たり寄ったり」

「え?」

 唐突な台詞に、僕は顔を上げた。

「俺の場合は、好きな女を事故で亡くしてる。しかも血の繋がった妹。腹違いだけどな?」

「そう、だったんですか」

 前にこうして酒を飲んだ時、彼もまたこう言っていた。

 ‘人間誰しも、何かひとつぐらいの荷は抱えている’と。

 今彼にどんな言葉を掛けていいのか分からず、僕は苦い顔で空のグラスを見つめた。

 不意にお代わりを促され、次のグラスを注文する。

 透さんは僕の告白にお返しするように、彼の恋愛事情を話してくれた。