「何だよ、勿体ない。食事にぐらい誘ってやればいいのに」

「と言われても」

 困った顔で笑い、グラスに口を付けた。

「今年檜が二十四で。優羽ちゃんがハタチ。年齢差も四つで丁度良いじゃん?」

「あの。いまいち透さんの基準が分かんないんスけど」

「一対一のデートってのに、まだ抵抗があるんなら、グループ交際みたいな感じでいっても良いんじゃないか?  俺も協力するし?」

「それ合コンじゃないスか」

 この人は何を期待しているんだ、と僕は呆れて息をついた。

「前にも言ったけど。俺は恋愛に関して、他へは目を向けれないんです」

「え?」

「だから。貰ったアドレスをそのまま放置していて良いものなのか、社交辞令に連絡だけしておくべきなのか」

「今、()()()って言った?」

「……はい、まぁ」

「って事は檜……?」

「そういう事です」

 神妙な顔つきで頷くと、透さんはマジかよ、と大袈裟に驚いた。

「檜、彼女いたんだ??」

「彼女は……いませんよ?」

「は?」

 ただ、と手元のグラスに目を向け、眉間にシワを寄せた。

「片思いなんですけど。今、リアルに想っている(ひと)はいます」

 僕が片思い中だというのが意外だったらしく、彼は不意に黙り込んだ。