自分の生活に必要な物は、お金を出せば幾らでも替えがきく。
けれど、檜から過去にプレゼントされたあのひまわりのネックレスも、先月誕生日プレゼントとして貰った指輪のネックレスも、二度とこの手には戻らない。
新しく自分で買えたとしても、それはもうあの頃のアクセサリーとは全くの別物だ。
「確かに。返して欲しいものは有るよ? でも、慎ちゃんにお金を要求するなんて……あたしには出来ない」
「それって……。結婚式のキャンセル料の事があるから?」
あたしは一つ頷いた。
「それもそうだし、今年から住む筈だった注文住宅の事もそう。違約金とかあるはずなのに、慎ちゃん、一人で何とかするって手紙に書いてあったから」
つい三日前。両親の元に届いた手紙には、結婚を破談にする事に対する謝罪と、式のキャンセル料についてが書かれていた。
慎ちゃん側の勝手な離別になるので、金銭は彼が支払うと有り、それ以前にあたしとはもう二度と会いたくない、とはっきり記されていた。
別れた理由については全く触れていない。その手紙を読んで、お母さんは心底悲しんでいた。
あたしが一方的に裏切ったのだと、見抜いてしまったからだろう。
「それで……? サチは今後どうするの?」
テーブルのアイスティーから視線を上げる。



