「そう言えば、優羽ちゃんとCM撮ったんだって?」
ゆらゆらとグラスの中で波打つ酒を見つめ、はぁ、と気怠げに相槌を打つ。
笹峰さんと共演したCM撮影日から、数日を経た金曜の晩だ。
僕は久し振りに、透さんと飲んでいた。
最早常連と化した芸能人御用達のバーで、いつものカウンター席に座っている。
手前に置かれたグラスを満たすのは、いつものジンジャエールでは無く、不透明なアルコール。
オレンジの丸いライトが降り注ぎ、グラスの淵をキラキラと輝かせている。
「……何て言うか。有り難い縁だよな~」
「有り難い?」
透さんの呟きに、僕はキョトンとする。
「そっ。優羽ちゃんはあの映画監督のお気に入りだし。
彼女はコネも無く実力でのし上がってきた。イコール、その功績は周りの大御所にも評価されている。
親しくしていたら、今後檜にとってもきっとプラスになる」
「……はぁ」
ーーそれで有り難い縁、か。
すなわち、それは彼女との繋がりを良いように利用するコネに他ならない。
「と言っても。優羽ちゃんの方は既に檜を気に入ってるみたいだけど?」
透さんのどこか意味深な目つきを訝しむ。
彼はニヤリと笑い、二の句を継いだ。
「この間。檜について優羽ちゃんから色々訊かれちゃってさ?」
「色々?」
僕は眉をひそめ、透さんの言葉を暫し待つ。



