ボーダーライン。Neo【中】


「大体さぁ? 自分が勝手に追い出した癖に、手紙一通だけって何? 貴重品の一つも送って来ないなんて有り得ないよ。そんなの、泥棒と一緒じゃない?」

「う、ん。そうなのかな……」

「そうだよ! 大体サチはお人好しすぎるよ。もっと怒って良いし、葛西さんが怖くて部屋に行けないなら、あたしも付いて行くから、一緒に荷物引き取りに行こうよ?」

 息巻く美波を見て、あたしはやんわりと微笑み、ううん、と首を振る。

「あれからもう二週間以上経つし、きっともう捨てられちゃってるよ。粗大ゴミの日も有ったし」

「けど、もし仮に捨てられてたとしてもその分はきっちり請求すべきだよ。サチだって、日記以外に大事な物、沢山あったでしょう??」

「……それはそうだけど」

 言いながら目を伏せた。

 財布や携帯、パスポートなどの貴重品。洋服に靴に鞄に化粧品といった生活必需品。ありとあらゆる私物を一変に失くしたと理解した時は、正直泣きたい気持ちになった。

 それでも、銀行のカードを止める事、携帯の回線を止める事、免許証の盗難届け、パスポートの紛失届け、思い付く限りの事務手続きを、数日に渡って済ませた。

 結果、携帯も新しい機種に変えたし、昨日は旅券担当窓口でパスポートも交付して貰った。