慎ちゃんにマンションを追い出されたあの夜から、既に二週間が過ぎていた。
数回の通院の甲斐もあり、顔のあざは綺麗に治っている。
彼との婚約破棄を境に、あたしは今、実家暮らしをしている。
結婚を破談にされたという理由で、正直なところ実家には居づらい。なので、早く働いてまた部屋を借りたいのが本音だけど、貯金の都合上そう出来ない状況にある。当然、顔の怪我を理由に、まだ仕事も探していない。
「……嘘でしょ?」
美波は顔を歪めて絶句していた。
結婚が破談になった経緯を正直に話し終え、あたしは首を振る。
「ううん、本当……。引いた、よね? あたしが浮気なんて……」
結婚式の日取りを決めておきながら、檜とエッチをした事について責められると思っていた。
「そんな、引くわけないじゃんっ。だってそれが、サチの正直な気持ちなんでしょう?」
あたしは黙って俯いた。
「檜くんの事じゃなくて、あたしがびっくりしたのは葛西さんの事! サチにそんな酷い暴力振るうなんて、許せないよっ。破談になったのは却って良かったんだよ!」
そう言って美波はアイスコーヒーのストローに口を付けた。



