ボーダーライン。Neo【中】


「結婚祝いも兼ねて、二人を祝福をする歌詞にした、そう言ってたよな?」

 僕は沈黙したまま頷いた。

 透さんの言う通り、内田や奈々に、メッセージとして届けば良いと。そんな想いを込めてリリースしたのだ。

 新曲を出す日にちも、二人の結婚式に合わせて、五月二十日にした。

「透さんは。ヒノキがそれと同じ事を今回もやればいい、そう言いたいんですよね?」

「そうだ」

「俺もその案は良いと思いますけど。今ラブソングを出したからって、それが先生に届くとは考えにくい」

 沈思黙考の末、僕はカイの台詞を遮った。

「いや。それなら、出来る」

「え?」

 カイを始め、他の皆も目を丸くしていた。

「陸がさっき言った問題も、ちょっと歌詞をいじれば難なくクリアだ」

 ーーそうだ、これしか無い。

 幸子ならきっとまだあの曲を覚えている。僕が過去、幸子を想って作詞作曲した歌だ。

 幸子がまだ覚えている、その可能性に賭けた。

 いじるって、と呟き、カイは目を見開いた。

「そうか、Flower! あの歌なら上手くいくかもしれない」

「だろ?」

 僕とカイ以外は、Flowerが何だよ、と首を捻っている。

「歌詞の内容も大事だけど。どうせならリリースする日にちにも、意味を持たせた方が良いよね?」

 カイの言葉を受け、それなら、呟いた。

「六月十七日」

「しか無いだろうな?」

 本来なら幸子が結婚式を挙げる日だ。その日に合わせてリリース出来たら、彼女はきっと僕の気持ちに気が付くはずだ。

 ***