カイの部屋に、一人の笑い声が満ちていた。
「檜が脅迫されるって、ぶはっ!!」
言葉を詰まらせ、透さんが腹を抱えて笑い転げる。
「笑い事じゃないですよ、透さん」
気が済むまで笑う彼に、僕は呆れて息を漏らした。斜向かいに座る陸と陽介も、困った事態に苦笑いを浮かべている。
メンバーの彼らにも、あの後事務所でカサイとの経緯を話し、二人は一様に深刻な表情を浮かべていた。
爆笑で済ませたのは透さんだけだ。
「いやいや、悪い悪い。でもまぁ、あれだ! 俺もカイの意見には賛成だな。払ったからと言って過去をバラされないって保証はどこにもない」
「だけど」
このままうやむやに出来る話でも無い。
「そいつ、言ったんだろ? お前らの過去を知ってる奴は山ほどいるって。だったら尚更じゃん?」
「え?」
「金を引っ張るだけ引っ張って、後はマスコミにリークする。仮に疑いをかけられても、シラを切るなんてワケない。そうだろ?」
そう言われればそうだ。僕はそこで押し黙った。
カイが呼ぼうと言った“あの人”は透さんの事だった。
恐らくは、僕が日頃から親しくしている透さん自らに説得して貰おうと、カイは考えたのだろう。



