撮影時の淡いクリーム色のワンピースに、ピンク色のストールを羽織り儚げな印象を受けた。

 正月明けに会った時のように、何か言いたげな顔で見上げてくる彼女だが、僕はとりあえず、お疲れ様でした、と会釈をする。

「監督さんからはオッケー頂けたんですけど。僕、今ので大丈夫でした?」

「え?」

「ほら、笹峰さん的に。失礼無かったですか?」

 彼女は一瞬キョトンと目を瞬き、「それはもうっ!」と慌てて答えた。

「Hinokiさん、完璧でした」

「ハハっ、それは良かった」

 買い被りすぎだろうと思うものの、やはりプロの女優さんから褒められるのは有難くもあり、嬉しい。

 笹峰さんはチラリと別の方向を一瞥し、あの、と再度改まった口調で僕を見た。

「何ですか?」

 やんわりと微笑んで訊くが、彼女は長い睫毛を伏せ、これ、と小さなメモ紙を僕に差し出した。

 おずおずと手渡されるそれを受け取り、中を見て、首を傾げる。

「あの、これは?」

「そっ、それでは、また……っ!」

 ーーは?

 そそくさと立ち去る彼女の背中を、唖然とした目で見送る。

 ーーて言うかコレ、どうすれば?

 僕は手の上に載る、十一桁の数字とアドレスが書かれた紙に、若干、頭を抱えた。