「銀行に寄るって、何で?」
海浜公園を出て、駐車場に向かった。
「今日は平日だし。このまま金を振り込む方が都合良いだろ?」
車のキーロックを解除し、運転席に座った。
「そうじゃなくて。何で払う気になってんだって事」
助手席に座るカイを見て、眉をしかめる。
「……じゃないと。幸子のプライバシーが守れない。互いの過去から公表されたら、たまんねぇんだよ」
そうなれば幸子の生活はきっと滅茶苦茶になる。精神的におかしくなる事だって考えられる。
「言い分は分かるけど……払ったからと言って、黙ってるとは思えない。
それにあの人、とりあえず三百万、って言ったんだ。恐らく次もある」
ーー次。
「分かってるよ」
正直なところ、考えもしなかったが、僕はいつもの見栄で素っ気なく答えた。
「ヒノキはいつもそれだな?」
「え」
「事の全貌を把握しちゃいないのに、昔からそうやって強がるんだ。
先生を守りたいのは分かるけど、それならもっと慎重に動くべきだよ」
カイの頑とした言い方に、若干、たじろいだ。
「確かに。三百万払って、また同じ額を要求されたら」
「この際、金銭の額はどうでもいい」
ーーは?



