ボーダーライン。Neo【中】


「銀行に寄るって、何で?」

 海浜公園を出て、駐車場に向かった。

「今日は平日だし。このまま金を振り込む方が都合良いだろ?」

 車のキーロックを解除し、運転席に座った。

「そうじゃなくて。何で払う気になってんだって事」

 助手席に座るカイを見て、眉をしかめる。

「……じゃないと。幸子のプライバシーが守れない。互いの過去から公表されたら、たまんねぇんだよ」

 そうなれば幸子の生活はきっと滅茶苦茶になる。精神的におかしくなる事だって考えられる。

「言い分は分かるけど……払ったからと言って、黙ってるとは思えない。
 それにあの人、とりあえず三百万、って言ったんだ。恐らく次もある」

 ーー次。

「分かってるよ」

 正直なところ、考えもしなかったが、僕はいつもの見栄で素っ気なく答えた。

「ヒノキはいつも()()だな?」

「え」

「事の全貌を把握しちゃいないのに、昔からそうやって強がるんだ。
 先生を守りたいのは分かるけど、それならもっと慎重に動くべきだよ」

 カイの(がん)とした言い方に、若干、たじろいだ。

「確かに。三百万払って、また同じ額を要求されたら」

「この際、金銭の額はどうでもいい」

 ーーは?