ボーダーライン。Neo【中】

「“それで良い”って」

「え?」

 ーーそれで良い?

「多分社長はさ。ヒノキを試したんだと思うよ?」

「試す?」

 ーー何のために?

 僕は暫く押し黙り、深く考え込んだ。

 海外行きの話を振られた時、社長は乗り気じゃないと言っていた。併せて得策じゃないとも。

 そういえば、社長の今までを思うと、仕事に関しては全て“指令”と“命令”だった。

 過去、初めてやったワンマンライブが良い例だ。

 高三の頃、社長に出来ると断言され、路上ライブや学校祭を利用して客を集め、あの二日間のライブを決行した。

 それなのに今回に関しては、放任主義もいいところだった。巧みな話術で、分岐点という言葉を使い、僕たちに選択をさせた。

 社長は僕の独りよがりな考えに、気付いて欲しかったのかもしれない。

 FAVORITEとしての今の活動が、今後に繋がる土台作りに過ぎず、自信を持って欲しいと思ったのかもしれない。

 ミュージシャンなのだから音楽をやるのが当たり前だけど、だからと言ってその視野を狭めるな、と。暗にそう示していたのだろう。

「……俺は。不合格だな」

 ーー上を見るばっかりで、考えが足らなさすぎた。

「いや。ギリギリ補欠合格だと思うよ?」

 そう言ってカイは嬉しそうに笑った。