ーーそれじゃあ。
「それじゃあ。幸子は結婚しない、そういう事になるのか?」
ーーまだ誰のものにもならない、そういう事か?
「多分ね」
カイは断定した口調で言った。
「迷ってるなら。やめた方がいいよ?」
「え?」
「海外行き。寧ろやめるって返事をするなら、今だと思うけど?」
「……でも、もう」
「社長は一週間考えろって言ったんだ。
なのにフライングしたのはヒノキだろ? 期日まで後三日ある。どうする??」
ーー幸子が結婚しないのなら、まだ俺にもチャンスがある。
「やめる」
不純な動機だが、僕は即答していた。
ーー今度こそ幸子を口説き落として、俺だけのものにするんだ。
「……だよね」
カイは笑い、すぐさま携帯を取り出した。社長に電話を掛けて会話するのを、少し不安な気持ちで見守る。
本来なら、自分で謝らなければいけないので、電話を代わる機会を待つのだが、カイは失礼しましたと言って会話を切り上げていた。
「社長、何て?」
携帯を仕舞うカイに訊ねると、カイは微笑を浮かべて言った。



