「その反応が見たかったんだよ」
カサイは、くっく、とせせら笑いを浮かべた。
「これが何でここに有るのか。不思議に思うのは分かるけど、問題はそこじゃない」
再び彼が話し出す中、カイにメモ紙を取り上げられた。
「そこに書かれたのが事実で、幸子の相手がお前だったという事だ。
さらには快楽と引き換えに、幸子から金を貰ってる。三万円、ちゃんと受け取ったんだろ?」
僕は俯きがちに歯を食いしばった。
冷静を保てなかった自分に、悔しさが募る。
「水を差す様で悪いですが。このメモには彼女の不貞行為が書いてあるだけで、ヒノキの名は一切書かれていない」
メモを読み取ったカイが冷静に切り返した。
「それは俺も分かってる。だから先にメモを見せたんだ。
まぁ、今の反応で、有り難くも百パーセントの確信は得たけどな?」
カサイは終始変わらぬ態度で、優位に立っていた。
「俺はな。来月幸子と結婚する予定なんだ。
なのに、ただ元カノって理由だけでお前はあいつを食った上、金まで貰ってる。
俺が受けた精神的損害を、ちゃんと償うのがスジだろ?」
カサイの発言は理にかなっていた。
視界の隅に、巨大な風車が映る。ゆったりと旋回し、その音が、ぐわんぐわんと頭に響いて目眩がした。
僕は両手を組んだまま、幾ら、と呟いた。



