『今日の午後三時、若洲海浜公園の多目的広場まで来い。来なければこの事をマスコミにリークする。
 それなりの責任は、ちゃんと取って貰うからな?』

 男は乱暴に告げ、一方的に電話を切った。

 ホーム画面に戻った携帯を手に、隣りに立つカイを見上げた。

 カイは強い瞳で、「行くしかないだろうな」と言った。




 それから数時間を経た午後三時。

 電話の男に指定された広場に着き、僕はサングラス越しに周辺を見渡した。

 都内に位置した海浜公園には、他にキャンプ場・サイクリングロード・海釣り施設などのレジャー施設が有るのだが、ここは差ほど人影が見られなかった。

 僕はゆっくりと回る巨大な風車を横目に、安堵の息をもらした。

 人目が有ると困るのは、お互い様という事だ。

 急な呼び出しにも拘らず、それに応じる事が出来たのは、竹ちゃんがうまくスケジュール調整をしてくれたからだ。

 その際、幾らか言い訳も必要だと思われたが、理由は後で話すから、と僕は無理を押し通した。

 ともあれ、どうしても抜けられない仕事では無かった分、運が良かったと思う。

 いや。もしかしたらこれからの時間を考えると、不運と取るべきかもしれないが。

「着いたは良いけど。あれが電話の男だって、どうやって確認する?」

 隣りに立つカイが溜め息混じりに言った。