ボーダーライン。Neo【中】

「檜が目指す所のロックミュージシャンってのは、一体どんな形体なんだ?」

「え?」

「檜はあの坂城透みたいになりたいんだと思ってたよ」

 僕はキョトンとした目で少し狼狽し、それもあるけど、と曖昧に答えた。

「強いて言うなら、あのStar・Blacksのエドみたいな、大物ミュージシャンが理想、かな」

「ボーカルのエドワード・ギルド氏か」

「ああ」

 僕が少年時代に好きになった、海外グループのアーティストだ。

 ファン歴で言えば、もう十年は軽く上回っている。

 僕がこの世界で、ロックミュージシャンとしての夢を見たのは、そもそも彼等の音楽に魅了されたせいなのだ。

 竹ちゃんは手に持ったままの手帳を上着の内ポケットに仕舞い、ハハっ、と軽く笑った。

「もうなってる、とまでは言えないけど。
 少なくともFAVORITEはロックミュージシャンとして、彼等に近しい状態までは成長している。僕はそう思うよ?」

 笑顔の彼に、つい面食らってしまう。竹ちゃんは本心から喜んでいるように見えた。

 思えばデビューする以前、このプロダクションへの所属が決まった頃から、彼はFAVORITEの面倒を見てくれている。だから僕たちの成長が本当に嬉しいのだろう。

「そっか」

 照れくささからどう返せば良いか反応に困り、僕は曖昧に目を伏せる。