慎ちゃんの手が、あたしの頭を掴み、呆気なく仰向けにされる。彼はあたしの上へ馬乗りになった。
「鍵を返してもう二度と逢えなくなった!! 今どんな気分だッ!?」
「……んちゃ、ごめ、……ごめ、なさ……ッ!!」
慎ちゃんの大きな手があたしの首もとに差し入れられ、ゆっくりと締め上げていく。
「許さねーよ」
低く冷たい声が降る中、徐々に意識が薄れていく。
ーーあたし。ここで死ぬの……?
そう思った時、記憶の中に彼の笑顔が浮かんだ。
ーー「幸子っ!」
茶色い目を細め、高校の制服姿であたしを呼んでいる。
ーー檜……!
首を絞める力が、不意にスッと弱まり、慎ちゃんはあたしから手を離した。
「今ここで殺してやりたいぐらいだけどな? 警察の厄介になるのはまっぴら御免なんだ」
「……ケホッ、ゲホッ……!!」
上からの重圧が消え、あたしは身をよじらせた。
喉元を押さえたまま、霞んだ視界に二冊のノートが映り込む。
ーーっき、日記……っ。
そばに落ちたそれを慌てて手元に引き寄せる。
「……とりあえずこのままここに居られても迷惑だ。立てっ!!」
慎ちゃんの手があたしの後頭部を鷲掴みにし、無理やり立たされた。



