ボーダーライン。Neo【中】


 慎ちゃんの手が、あたしの頭を掴み、呆気なく仰向けにされる。彼はあたしの上へ馬乗りになった。

「鍵を返してもう二度と逢えなくなった!! 今どんな気分だッ!?」

「……んちゃ、ごめ、……ごめ、なさ……ッ!!」

 慎ちゃんの大きな手があたしの首もとに差し入れられ、ゆっくりと締め上げていく。

「許さねーよ」

 低く冷たい声が降る中、徐々に意識が薄れていく。


 ーーあたし。ここで死ぬの……?


 そう思った時、記憶の中に彼の笑顔が浮かんだ。


 ーー「幸子っ!」


 茶色い目を細め、高校の制服姿であたしを呼んでいる。


 ーー檜……!


 首を絞める力が、不意にスッと弱まり、慎ちゃんはあたしから手を離した。

「今ここで殺してやりたいぐらいだけどな? 警察の厄介になるのはまっぴら御免なんだ」

「……ケホッ、ゲホッ……!!」

 上からの重圧が消え、あたしは身をよじらせた。

 喉元を押さえたまま、霞んだ視界に二冊のノートが映り込む。

 ーーっき、日記……っ。

 そばに落ちたそれを慌てて手元に引き寄せる。

「……とりあえずこのままここに居られても迷惑だ。立てっ!!」

 慎ちゃんの手があたしの後頭部を鷲掴みにし、無理やり立たされた。