ボーダーライン。Neo【中】


 表情を固め、目を見張る。

「自分の大事な日記帳だけが消えたのに。まさか気が付いてない訳ないよなぁ!?」

「……っ!」

 明らかに豹変する彼を見て、数歩後ずさる。

 ーーまさか。

「慎ちゃん……」

 ーー慎ちゃん、が?

 彼はその場に立ち上がり、突如として声を張り上げた。

「金目の物は何一つ盗まれてないし、犯人の靴跡も無い。これが空き巣の仕業だって!? どう考えてもおかしいだろうッ!??」

「……まさか、慎ちゃんが、これ?」

 そんな事はあるはずが無い。

 きっとあって欲しく無いと脳が望んでいたのだろう。

 あたしは彼を見つめ、体が冷えていくのを感じた。

「そうだよ!? 俺がぜんっぶ滅茶苦茶にしたッ!!」

 慎ちゃんは両手を広げ、嘲る様に笑った。

 ーーなんで、なんで、なんで??

 ただ一つ、頭に浮かんだ心当たりが有るのに、否定したい気持ちが優っていた。

 唇は小刻みに震え、どうして、と理由を訊ねたいのに、上手く言葉が出てこない。彼から放たれる恐怖に、完全に萎縮していた。


「幸子。お前、俺を裏切っただろ?」


「え」


 慎ちゃんの冷ややかな口調に、喉が干上がる。