表情を固め、目を見張る。
「自分の大事な日記帳だけが消えたのに。まさか気が付いてない訳ないよなぁ!?」
「……っ!」
明らかに豹変する彼を見て、数歩後ずさる。
ーーまさか。
「慎ちゃん……」
ーー慎ちゃん、が?
彼はその場に立ち上がり、突如として声を張り上げた。
「金目の物は何一つ盗まれてないし、犯人の靴跡も無い。これが空き巣の仕業だって!? どう考えてもおかしいだろうッ!??」
「……まさか、慎ちゃんが、これ?」
そんな事はあるはずが無い。
きっとあって欲しく無いと脳が望んでいたのだろう。
あたしは彼を見つめ、体が冷えていくのを感じた。
「そうだよ!? 俺がぜんっぶ滅茶苦茶にしたッ!!」
慎ちゃんは両手を広げ、嘲る様に笑った。
ーーなんで、なんで、なんで??
ただ一つ、頭に浮かんだ心当たりが有るのに、否定したい気持ちが優っていた。
唇は小刻みに震え、どうして、と理由を訊ねたいのに、上手く言葉が出てこない。彼から放たれる恐怖に、完全に萎縮していた。
「幸子。お前、俺を裏切っただろ?」
「え」
慎ちゃんの冷ややかな口調に、喉が干上がる。



