勿論、盗られていないに越した事は無いが、一体どんな泥棒なのだろう、と頭を悩ませる。

 そこでふと冷静になり、思った。

 金目の物以外で、あたしの大切な思い出が盗られていないかどうか、ちゃんと確認しなければいけない。

 たとえ部屋から持ち出されていなくても、これだけ荒らされているのだ。

 いつ慎ちゃんの目に留まってもおかしくない。そう考えただけで、背筋がヒヤッとした。

 クローゼットの前に移動し、愕然とする。

 思い出を仕舞った箱が二つとも開いていた。それどころか、何よりも大切な二冊の日記帳だけが忽然と消えている。

「うそ、無い……」

 確かに今朝は有ったのだ。仕事に出る前に少しだけ読み返して、ちゃんと箱に仕舞っておいた。

 ーーどうしよう、あれが無いと困る……っ。

 あたしは半ば泣きそうな気持ちで唇を噛んだ。

 あの日記帳には、過去、檜とした恋愛が赤裸々に綴られている。

 ページの間には、ロンドン旅行で撮ったツーショット写真も挟んだまま。

 あれが万が一世に出回る事になったら、檜に迷惑が掛かる。

 あたしは散在した畳の上に正座し、腹部をぎゅっと手で押さえた。