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 お弁当屋さんの仕事を終え、夕方五時過ぎに帰宅した。

 エレベーターで四階まで昇り、部屋の扉に鍵を刺したところで、それに気が付いた。

「あれ?」

 ーー嘘でしょう? 鍵が、開いてる?

 仕事に出る前、ちゃんと施錠した事を確認したので鍵のかけ忘れではない。

 もしかしたら、慎ちゃんが急な用事で帰って来たのかも……。

 出来るだけ良い方に考え、恐る恐る扉を開ける。

「慎ちゃん……? 帰ってるの?」

 玄関の三和土《たたき》を見下ろすが、当然の事ながら彼の革靴は無い。

 いつもの様にそこで靴を脱ぎ、おずおずとリビングの扉を開ける。

 ーーっ!?

 ありとあらゆる物で散乱した室内を見て、愕然となった。

 ーーもしかして、泥棒?

 あまりそうは考えたく無いが、キッチンの食器棚やテレビのサイドボード、カウンターの引き出しが無造作に荒らされ、中身が床へばら撒かれている。

 あたしはその場に座り込み、直ぐさま彼に電話を掛けた。

 ちょうど手が空いているところだったのか、慎ちゃんは数回のコール音で電話に出てくれた。

『もしもし? どうした?』

「あ、慎ちゃん? ど、どうしよう。家の鍵、開いてて。部屋がめちゃくちゃで」