ーーそんな風に、想ってくれてたんだ。

 やっぱり檜にとって、八つの歳の差が大きな壁なんだと改めて認識する。

「なるほど。男を立ててくれるという事かい?」

「あ、はい」

「まぁ確かに。あれに似ないで幸子は物腰やわらかだし奥ゆかしさも有る。
 ……親バカで申し訳ないけど」

「いえ」

 目を細めて笑う父に、檜も少しだけ口角を上げている。

「結婚は卒業後って言ってたけど。実際、そのビジョンは有るのかい?」

「え?」

「ほら、何処に住むとか。いつ籍を入れるとか、そういうの」

「そ、れは……」

「ああ、まだ認めた訳じゃないよ。あれがうるさいし」

「誰がうるさいって?」

 冷ややかな言葉と共に、引き戸が開いた。

「ほんとに、お父さんたら……」

 母は今しがた座っていた座布団に腰を下ろし、「さっきはごめんなさいね? 」と来た時同様の笑みを浮かべた。

「まぁ。幸子を想ってくれているのは、よぉくわかりました」

 父との会話で幾らか和んだ空間が、またビシッと引き締まる。