ボーダーライン。Neo【中】

「別にそんな本格的にどうって訳じゃないらしい。ただ女優の笹峰さんに少し口紅を引く程度で」

「……まぁ、うん。内容は分かったけどさ。その笹峰さんと共演するのが何で俺なわけ?」

「ああ、あっちのスポンサーがどうしても檜と彼女を使いたいらしい」

 しれっと答える竹ちゃんに、尚も首を捻っていると、彼は続けて「華のある人物ってのが表向きの理由みたいだけど」と意味深に笑う。

「実際は、この間試写した映画の話題作りだろう。
 共演者として主演男優に依頼しないのは、檜はアーティストとしてもビジュアル面でも、今注目されてる人物だから。
 何でも良いから起用したいって業者は結構多いんだ」

「ふぅん」

 僕は眉をひそめて嘆息した。

 確かにFAVORITEが主題歌を務め、昨年クランクアップした映画は、コスメチックにまつわる内容だった。

 化粧品会社は映画を通じても商品を売りたいし、その製作者側は、CMが宣伝材料になる。

「撮影日は来週だけど。まさか、気が変わったとか……言わないよな?」

 僕の態度が一向に煮え切らないので、竹ちゃんが控え目に訊ねた。