「て言うか、美波さん。この事記事にしないで下さいよ? ちょっとした成り行きだったんですから」
当人同士以外であの情事を知られていると思うと、顔の中心が熱くなる。
「しないわよ、親友の事だもの。
……て、言うか。その成り行きについて教えて欲しいのよね。サチ、誤魔化して何も言ってくれなかったから」
「はぁ?」
ーーマジかよ、この人。カマ掛けたの??
僕は顔をしかめて嘆息し、手の平で額を押さえた。
チラと部屋の扉に目を向ける。僕は一旦立ち上がり、扉を開けて周辺に誰も居ない事を確かめた。
ドアノブを引き、キチンと扉を閉めてからまた元の場所に座る。
詳細を述べるのは少し躊躇われたが、声のトーンを落とし、慎重に言葉を選んだ。
「……まぁ、その。
夜、道端でバッタリ出くわして。彼女がまだ話したいって言ったから、部屋に連れて帰って」
「で。食っちゃったと?」
「……まぁ。……そうです」
美波さんは、あちゃー、と頭を抱えた。
「キミは。結婚前の女に何やってんのよ?」
「いや、俺がじゃなくて」
「え?」
「……あの時は。その、向こうから。抱いて欲しいって……お願いされたと言うか」
言いながら、頬や耳まで熱くなる。
「えっ!? うそ!! え、サチが!??」



