「考えるって、ヒノキ。まさか本気で受けるつもりか?」
互いに対面したソファーに座り、カイは正面の僕へ鋭い視線を寄越した。
「まだ分からない」
冷めたコーヒーに口を付け、カイの台詞をさらりと交わす。
「この話を受ければどうなるか、ヒノキだって分かってるだろ? FAVORITEは解散するかもしれない」
「俺はそうは思わない」
「……何で?」
信じられないと言いたげに、カイは表情を強ばらせた。
僕はカイを見据えて言った。
「契約は一年だし、その間に二人で頑張って海外との繋がりを作る。
契約が切れたらまた日本に帰って来て、FAVORITEとして再始動する」
「そんな上手くいくとは思えない」
「何でだよ?」
「あのなぁ。見込みが有ると思われたから、今回この話がきたんだ。
一年の契約なんて所詮は建て前で、売れれば更新を迫られる。そうしたらヒノキは必ずイエスを出すよ」
真摯な瞳で言うカイを見て、僕は暫し口を噤んだ。
ーー確かにそうかもしれない。
このところ日本での活動にマンネリを感じていた。
ミュージシャンとして、ある程度の地位まで登り詰めた僕たちは、今後幅を広げる為に多方面で活動するのも目に見えている。



