ボーダーライン。Neo【中】

あたしは慎ちゃんの顔が見れず、シンクの中で視線を泳がせた。

「サチ?? 大丈夫か!?」

 完全に平静を失っていた。指先が震え、唇をキュッと噛みしめる。

 慌ててシンクへ駆け寄った彼は、心配そうにあたしを見やり、「怪我なかったか?」と両手に触れた。

「うん。ほら、大丈夫。何ともない」

 言いながらいつも通りの笑みを作る。

 慎ちゃんの優しさに罪悪感が募った。

「ごめんね、びっくりさせて」

「いや」

 落とした皿は、幸い割れる事も無かったので、そのまま蛇口から水を出した。

「ええと。何の話してたっけ?」

 知っていながら首を傾げた。

「え。……ああ、いや。別に大した話じゃ無いし、もういいよ?」

「そっか」

 再び檜の話題を振られたらどうしようかと身構えるが、そうはならなかった。

 檜との交際の過去を知られたらどうしよう。

 胸に一抹の不安が過ぎるが、あたしは何とか気丈に振る舞い、後片付けに専念した。

 ***