◇ ♂

【お早う、檜。さっき竹原さんから連絡を受けたんだけど。今日、11時に社長室に来いとの事。遅れないようにね?】

 朝起きたら、そんなメールが届いていた。

 送信元はカイだ。

 ーー社長室?

 僕は寝惚けまなこをこすり、思案する。

 デビュー当時からそうだが、社長室への直々の召集がある時は、何か特別な指令や任命、報告が待っている。

 何だろう、と首を捻るものの、考えたところで分かる訳もない。

 ーー十一時か……。

 既に部屋は明るく、スマホのディスプレイは午前九時を告げていた。

 今日の仕事は午後イチの為、二時間も早まる事になるが。

 僕は欠伸をもらし、仕方なく了解の有無を書いて送信した。



 約束の十分前にプロダクションへ着き、社長室へと向かう。

「……お早うございます」

 途中、マネージャー補佐の上河 茜とすれ違い、お早うと返事をする。

 茜は営業マンらしき二人の男を、案内しているところだった。

 すぐ近くに一般の方がいるのはどこか居心地が悪く、僕は早々に立ち去ろうとした。

「あれ?」

 不意に茜が呟いた。