ボーダーライン。Neo【中】


 ーーやっぱりもう少し、時間を掛けて打てば良かったかな。

 幸子を思い出すと、決まって物憂げな吐息がもれた。

 カイの言う通り、ストーカーじみているかもしれないが、幸子に会いたくてたまらない。出来る事なら部屋に閉じ込めて、ずっと側に居させたい。

 今なら間違いなく、未練がましい男の、切ないラブソングが書けそうだ。

「そう言えば。檜とは()()()()()、した事無かったよな?」

「え?」

 彼を見つめ、ふと足が止まる。

「あ、いたいた。檜っ!」

 ちょうどその時。

 前方の階段を昇ってくる、マネージャーの竹ちゃんに声を掛けられた。

 竹ちゃん、と呟きを漏らすが、彼と透さんは互いに会釈し、新年の挨拶を口にした。

「……じゃあ檜。またな?」

「あ、はい」

 片手を挙げて去って行く彼へ、僕は軽く会釈し、微笑んだ。

 ***