「どうしても結婚はしなきゃだめ? ただ付き合ってるだけじゃ満足出来ないの?」
真摯な瞳で美波を見つめ、あたしは深く頷いた。
美波はうーん、と更にうなだれる。
「檜くんがさ、卒業するのを待って一緒に同棲するとか。そういう付き合いだけじゃだめなの?
実際、籍入れずにずーっと付き合ってるカップルだって世の中には沢山いるんだよ?」
「そんなの。ずっと一緒にいるって保証ないじゃない。
檜はモテるから。いつか心変わりして振られるんじゃないかって、不安なんだもん」
美波は困った様に嘆息し、その感覚は人それぞれだと思うけど、と呟いた。
「檜くん。サチがいま妊娠したいって思ってる事、当然知らないんでしょ?」
あたしは顔を曇らせ、躊躇いがちに頷いた。
痛い所を突かれた、と思っていた。
「じゃあさ。とりあえず、例えばの話だよ?」
そう言って美波は箸を置く。
「例えば?」
僅かに口端を上げる美波に、あたしは首を傾げた。
「今後サチのその思惑が叶って、妊娠したとするよね?」
「思惑って……」
嫌な言い方だ、と眉をしかめた。



