ボーダーライン。Neo【中】


「どうしても結婚はしなきゃだめ? ただ付き合ってるだけじゃ満足出来ないの?」

 真摯な瞳で美波を見つめ、あたしは深く頷いた。

 美波はうーん、と更にうなだれる。

「檜くんがさ、卒業するのを待って一緒に同棲するとか。そういう付き合いだけじゃだめなの?
 実際、籍入れずにずーっと付き合ってるカップルだって世の中には沢山いるんだよ?」

「そんなの。ずっと一緒にいるって保証ないじゃない。
 檜はモテるから。いつか心変わりして振られるんじゃないかって、不安なんだもん」

 美波は困った様に嘆息し、その感覚は人それぞれだと思うけど、と呟いた。

「檜くん。サチがいま妊娠したいって思ってる事、当然知らないんでしょ?」

 あたしは顔を曇らせ、躊躇いがちに頷いた。

 痛い所を突かれた、と思っていた。

「じゃあさ。とりあえず、例えばの話だよ?」

 そう言って美波は箸を置く。

「例えば?」

 僅かに口端を上げる美波に、あたしは首を傾げた。

「今後サチのその()()が叶って、妊娠したとするよね?」

「思惑って……」

 嫌な言い方だ、と眉をしかめた。