「まぁ、でも。サチにもそう思うに至った理由がちゃんと有るんでしょ?」
強い口調で問われ、あたしは今の気持ちをポツリポツリと吐露した。
通常は逆なのだが、妊娠したいと思うのは、その先に結婚があるからだ。
それも長い目で待っていられない程の理由を、あたしは美波に話して聞かせた。
最近出会った上河茜さんに檜との関係を疑われ、しかも遠回しに結婚など出来るはずがない、と断言された事。
卒業さえ迎えれば、心配事は無くなると思っていたのに、檜が芸能界への道を目指すため、芸能事務所の社長に結婚を反対されるかもしれないと不安を抱えている事。
そして実家の父や母にも胸を張って紹介出来る相手ではないと、後ろめたさを感じている事。
それら全ての要因を考えた結果、妊娠を理由にした、いわゆる“できちゃった結婚”なら誰にも邪魔されず、永遠に檜のそばに居られる。そう考えたのだ。
美波は話を聞き終え、深いため息をついた。そして、うんうん、と数回首肯する。
「その、茜ちゃん? って子はかなりのくせ者な気がして怖いけど。
サチにとって結婚ってのは……そんなに重要なの?」
「え?」



