ボーダーライン。Neo【中】

「……優羽ちゃんって。檜の事好きなのかな?」

「はい?」

 突然何を言い出すのだ、と呆れた目を向ける。再び歩を進めた。

「いや、今の反応。……何となくだけど、そんな気がして」

 彼の言葉を受けて、昨年、完成披露試写会で会った笹峰さんをぼんやりと思い出していた。

 高校時代の奈々とどこか似通った目つきに、僅かな戸惑いを覚えた。

「……止めて下さいよ」

 自身のうぬぼれに苦笑を漏らし、その心当たりを難なく否定する。

「なんだ? 彼女みたいな可愛らしい子はタイプじゃないか?」

「いやいや、そういう問題でも無くて。……て言うか透さん、何か面白がってないスか?」

「ハハ、バレたか」

 茶目っ気のある人だなぁ、と僕は呆れて笑みを浮かべる。

「そもそも俺の場合。誰であっても恋愛に関しては、なかなか真剣になれないんです」

 透さんにハッキリ言い切りながらも、幸子以外は、と心の中で補足する。

 何であんな(ひと)がいるのだろう、と幸子の存在そのものを恋しく思ってしまう。

 透さんが言ったタイプという言葉を用いるなら、外見中身申し分なく、幸子は僕のストライクだ。

 けれど、この不毛な想いが叶うはずも無く、新年を迎えて送ったメールに対して未だに返事は届かない。