焼きそばを食べ終え、お茶で喉を潤していると、不意に圭介が真面目な口調で切り出した。
「さっきの彼の事だけど。いつから付き合ってんの?」
「……去年の、クリスマスイブだよ」
「そっか」
あたし達の間に流れる沈黙を、ガヤガヤした祭りの雰囲気がそっと埋める。
「幸子は一般的な分別があるから分かってると思うけど。
今の状況は幸子にとって不利じゃないのか?」
目線を足元に据えたまま、あたしは僅かに口元を緩めた。
「だってさ。幸子、すげーこの仕事に就きたがってたじゃん?」
「……そうだっけ?」
「そうだよ。公務員だからボーナスが良いとか福利厚生が充実してるとか、色々理由つけてたけど。
教鞭とる事に憧れてたし、担任としてひとクラス受け持つ事になった時も、意気込んでた」
あたしはキュッと口を結び、ペットボトルのお茶を両手で握り締めた。
「何より教員免許取る為に、すげー勉強してたじゃん?」
「うん。そうだね。大学受験より勉強した気がするし」
両手で包み込んだペットボトルが、手の平の体温で、じわりと熱を帯びてくる。
あたしは目を細めたまま、徐々にぬるくなる液体を見ていた。
「だからさ。俺は今一時の感情で、苦労して得た立場をふいにするのはどうかと思う。
第一バレた時のリスクが高すぎる」
「……そう、だね」



