実のところ、檜と圭介はたった一度だけ顔を合わせた事がある。
檜と交際を始めた翌日、クリスマスの事だ。
あたしは檜とのデート中にばったり圭介と出くわし、ちらほらと会話を交わしていた。
「やっぱり」
そう言って圭介はため息をついた。
「前にファミレスで会った時。あの目がすげー印象的だったから覚えてたけど。
まさか幸子が生徒と付き合うなんて」
「意外だった?」
あたしは眉を下げて微笑んだ。
「うん……」
圭介はあたしから目を逸らし、どこか複雑そうな顔をしていた。
「てか。ごめんね? 他の生徒がいる手前、嘘に付き合わせて」
「いや、それは別に。構わないけどさ」
自動販売機でお茶を買い、どこか座って食べれる場所はないかと、敷地内を歩いて見て回った。
当然の事ながら、大体どの場所も生徒が占領しているので、正門から近い石段に腰を下ろす事にした。
校舎で出来た影がちょうど良い具合だ。
プラスチックケースに掛かる輪ゴムを解き、あたしは焼きそばを食べながら圭介と会話を楽しんだ。
そんなあたし達の側を通り過ぎる生徒が、ちらちらとこちらを見やり何か囁き合っていく。
おそらくあたしが受け持つ、二、三年の生徒だろう。



