圭介と恋人らしい雰囲気を醸し出して、檜との疑いを晴らしておきたいと考えた。
元カレと共に屋台へ行くと、水城さんと内田くんが嬉しそうに手を振ってくれる。
内田くんと同じく焼きそばを作るカイくんや、奥に立つ檜と目が合い、軽く教師の笑みで笑いかける。
檜の側に立つ上河さんが、一瞬、眉をひそめた。
「せんせ~もしかして……っ! その人が噂のカレシ??」
明るい口調で水城さんが可愛く問い掛けた。
檜の手前、若干申し訳ない気もするが、あたしは躊躇いも無く笑顔で答えた。
「そうよ~? かっこいいでしょ??」
ね? と隣りの圭介に目配せすると、彼は幾らか困った顔で口元を緩めた。
檜は当然ながら、ピクリと眉を動かし、表情を固めている。後ろめたさにその瞳を見る事が出来ず、あたしはすぐさま目を逸らした。
「うん、かっこい~!」と水城さんだけが楽しそうに笑っていた。
会計に立つ檜に二人分の代金を払い、あたしは彼らに背を向けた。
ある程度離れた場所まで来ると、さっきから向けられる圭介の視線にチラリと目を上げた。
「あ。あのさ」
言いにくそうに眉をひそめる彼が、一体何を言おうとしているかなど、既にお見通しだった。
「うん。‘彼’だよ?」
会計でお金を受け取る檜を、圭介はジッと凝視していた。過去の記憶を辿り、ハッと顔色が変わったのも見逃さなかった。



