ボーダーライン。Neo【中】


 ーー何なの、あたしの彼氏に気安く触らないでよ。

 突如として湧き上がる怒りで、頭がどうにかなりそうだった。

 露店の通りは、ガヤガヤと人の声で賑わっているが。

 彼らの声はひときわ大きく耳へ届いた。

「てか、檜くんは焼きそば焼かないの? 何で会計?」

「上河、今それ言うな。隊長がうるせーから」

「たいちょう?」

「おねーさん、檜は焼きそば作れないんですよ~?」

「だからうるせーって」

「アハハっ、そうなんだ? でもなんか、ぽいぽい~」

 指を差してケラケラ笑う上河さんをスルーし、檜は後ろの女子から受け取った焼きそばを渡している。

「ほれ、散った散った!」

 手のひらを返す檜の態度に、彼女は「ツレない~」と尚も絡んでいる。

 終いには鞄から携帯を取り出し、一緒に写メを撮ろうと言い出した。

 彼女の図々しさに、あたしは腹を立てていた。

 いい加減にして欲しい、と思うと共に唇がわなわなと震え出し、あたしはキュッと唇を噛んだ。

 鉄板から離れた場所に立つ檜をただ真っ直ぐ見ていると、「さっちゃん先生っ」と呼ばれる声に気が付いた。

 あたしは羞恥心からサッと目を逸らし、聞こえない振りを決め込んだ。

 正直なところ、あの子に会うのが嫌だった。